積立王子がこっそり教えるおカネが“育つ”レシピ vol.6 「明日はもっと安く買える」デフレ社会の落とし穴

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2018.06.28
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誰もが気になる将来の「お金」のこと。本連載はその不安や疑問について、働く女子マネ子が、お金を積み立てさせたら日本一と評判の積立王子こと、セゾン投信の中野晴啓社長と一緒に考えます。今回は、インフレとデフレについて考えてみましょう。

マネ子(30歳・独身)

マネ子(30歳・独身)

「将来のために貯金しなきゃ」と、漠然と感じているが、社会人になって一人暮らしを始めてからなかなか貯められずにいる、働く女子。

デフレ社会の落とし穴

マネ子 最近、買い物していると、モノの値段が高くなったような気がします。

中野 いいところに気付きましたね。モノの値段が上がることは、個々の人にとってはうれしいことではないと思いますが、日本の経済全体で見たら、実はいいことなんですよ。

マネ子 でも、お給料が上がっていないのに、モノの値段が上がったら、どんどん貧乏になっちゃいますよね。

中野 まさにその通り。今回は日本で20年以上にわたって続いているデフレ(デフレーション・物価が持続的に下落していくこと)について説明しましょう。

 

物価が下がることはお給料が下がること

経済低迷のイメージ

日本では、高度経済成長後の1990年代からデフレが20年以上も続いてきました。政府は、何とかデフレから脱却しようと、政策を実施してきましたが、なかなか思うような結果が出ていないのが現状です。

では、そもそもデフレとはどのようなことなのでしょうか。改めて確認してみましょう。

デフレとは、お金の価値とモノの価値を比べた時に、お金の価値の方が高い状態を意味します。一方、インフレはお金の価値よりもモノの価値の方が高い状態です。図式化すると、下記のようになります。

デフレ:お金の価値 > モノの価値

インフレ:お金の価値 < モノの価値

経済成長を支える企業の活動というのは、モノ(やサービス)を作ることで、それをお金に変えていくことです。なぜ、デフレが悪いこととされているかというと、経済成長を停滞させる悪循環を生んでしまうからです。

物価のイメージ

みなさんが買い物に行ったとき、昨日まで100円だったコップが、今日は90円になっていたとします。そのとき「もう少し待てば、もっと安くなるだろう」と期待して、そのとき買うのを控えるでしょう。この「将来もっと安く買えるだろう」と、買うのを先延ばしにする思考回路こそが、デフレを生み出しています。

「どうせ買うなら安く買いたい」と思うのは自然なことです。しかし、この状況が続いていく、つまり物価が継続的に下がると企業がもうからなくなり、ひいてはみなさんのお給料も下がっているということに気付かなければなりません。モノを安く買えるのはうれしいことですが、マクロの視点で見たときに、みなさんにとって不利益になっているのです。

インフレへの転換に必要なのは私たちの「気持ち」

値上げのイメージ

現に、20年以上もデフレが続いてきたのですから、この「病」は深刻です。経済は、穏やかなインフレが健全な状態だとされており、社会もインフレが前提でないと、成長は見込めません。しかし、今(2018年4月現在)、宅配会社などが次々と値上げを発表し、デフレ脱却の兆しと見る向きもあります。

ただ、私たちの感覚はデフレにどっぷりと浸かってきてしまいました。企業が値上げをしても、私たちが「この先もっと安くなるだろう」という気持ち(デフレマインド)のままである限り、デフレ脱却は困難でしょう。私たちが「今日買わないと、明日にはもっと高くなってしまうかもしれない。だから今買おう!」という気持ちになって初めて、デフレからインフレに転換するのです。

給料のイメージ

課題はもう一つあります。経営者たちも、長年のデフレマインドに慣れてきてしまっているので、物価が上がって企業がもうかっても給料アップを渋る可能性が高いことです。収入が増えなければ結局モノが売れないので、悪循環を断ち切れないのです。インフレが健全になるためには、物価が上がったら、その分だけお給料も上がるのが条件なのです。

ただ、インフレになればいいかというと、そういうわけでもありません。日本には現在、1000兆円もの預金があります。毎年2%の物価が上昇するとすれば、10年間でモノの値段は20%上がることになります。というのは、1000兆円のお金の実質的な価値は10年後には800兆円に目減りしてしまうことになるのです。預金大国の日本では、このままだとインフレが必ずしもいい影響を与えるかどうかは未知数なのです。

日本人は現金が大好きですが、お金を現金のままにしておくと、インフレが進んでいくとその価値はどんどん下がっていきます。投資をして、お金を増やす仕組みに乗せてあげることが賢明でしょう。

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次回は、働く女性や主婦におすすめのつみたてNISAやiDeCoについてお話ししたいと思います。

『おカネが育つレシピ』バックナンバーはこちら
セゾン投信代表取締役社長 中野晴啓

「積立王子」こと
セゾン投信
中野晴啓 代表取締役社長

1987年に大学卒業後、アパレル業に従事したいとの思いでセゾングループに入社するが、入社3日後に金融運用会社に配属される。16年間ファンドマネージャーを務め、2006年にセゾン投信を設立。年間150回に上る講演を行っており、メディアにも引っ張りだこ。

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