3児の父であり、育児に対する考え方など多くの方から支持されている俳優・タレントの照英さん。お子さんが生まれてから、仕事への向き合い方やライフスタイルが大きく変化したといいます。今回は、お子さんが生まれてから変化したことや、父親としてどのように子育てに向き合っているかなどについてうかがいました。
タレント・俳優
照英さん
ロケでの体験は家族とも共有
―― 陸上選手、モデル、俳優を経て、いまではバラエティ番組や旅番組など
幅広く活躍されていますが、転機はどのようなことだったのでしょうか。
さまざまなジャンルの番組に出演させていただくようになったのは、結婚して子どもができてからのことです。
独身時代は役者一本でやっていましたが、誰かの作品を、その役になりきって演じるので、本当の自分が見えなくなることもありました。そんなとき、子育て番組の司会をやらせていただく機会があり、作品の中の誰かを演じるのではなく、自分自身のキャラクターを出せることにすごく面白さを感じました。そこから「自分の可能性を広げていきたい」「いろいろなことにチャレンジしていきたい」と思えるようになったんです。「照英」というキャラクターを出せる仕事が、自分の性に合っているなと思います。
―― お子さんが生まれてから、活動の幅が広がったのですね。
独身の頃は、自分が楽しく仕事ができればそれでいいと思っていました。一人で過ごす時間が好きで、終日家でのんびりすることもあったのですが、結婚してからはそんな気持ちはいつの間にか忘れていました。
一人で何かをするよりも、子どもと一緒のほうが断然楽しいですし、自分が体験したことは家族とも共有したい。
出演した旅番組の旅行を家族にも味わってほしいと思って、収録後に番組と同じプランで旅行したこともありますし、ある番組で乗った豪華客船に、その後家族とも乗りました。
今は家族がテレビに出ている自分を見て、楽しんでくれたらいいなと思いながら、仕事に取り組んでいます。家族の存在が私の原動力です。
―― 父親として大切にしていることはどのようなことですか。
我が家では、2週間に1回くらいの頻度で、妻に丸一日子育てや家事の「オフの日」を作っています。
多くの子育て中の女性は数時間の外出ができることはあっても、丸一日オフの日はなかなか作れていないのではないでしょうか。
妻はオフの日にはネイルサロンに行ったり、友達と旅行したり、好きなことをして過ごしているようです。
そうするようになったきっかけは、子どもが生まれたばかりの頃。仕事に行く際に、子どもが大泣きしていたんです。
子どもをあやす妻を見て、父親である私は仕事を理由に逃げることができますが、妻にはそれができないんだと痛感しました。
「この状況に毎日耐えているんだな」と、その大変さを感じたのです。自分にできることは何かを考えたときに、子どもを1日私が面倒を見て、妻に好きなことができる時間を持ってもらうことが、一番の育児への参画ではないかと思いました。妻が生き生きと笑顔で過ごしてくれますし、慣れない家事を伝ったりするよりも喜ばれます。
また、父親は家でも自分のことは自分でやるようにするのは、社会人であれば当たり前ですよね。脱いだら脱ぎっぱなし、食べたら食べっ放しは、いい年の大人のすることではありません。そういう親の背中は、必ず子どもも見ていますよ。
―― 子育てに対して心がけているのはどのようなことですか。
いつも心に留めているのは、自分の子どもを他の子と比較しないということです。これには、私も苦い経験があります。幼稚園に入った当時、文字が書ける子もいる中で、うちの子はまだやっとおむつが取れたころで、できる子との差にがく然としました。
「みんなできているのに、どうしてうちの子だけできないのか。教え方が悪かったのかな」と不安になったり、怒ってしまったことも何度もありました。
でも、よく考えたら、うちの長男は早生まれ。4月生まれの子と比べたら、10カ月もの成長の差があるのです。
できることにも差があるのは当たり前で、いつかは必ずできるようになる。そんなことにも気付けずに息子に怒りをぶつけてしまった自分が、今思い出しても本当に情けなく感じます。できないことを責めるのではなく、「この子にしかできないこと」を見つけて、尊重したいと思うようになりました。 他人の子と比較して叱ったところで、変わるわけではありません。他人の家の方法を真似しても、うまくいくはずがないのです。「我が家には我が家のやり方でいい」と気付けたので、その気持ちを忘れずに接していきたいですね。
[聞き手から]
お子さんが生まれてから、さまざまなジャンルのお仕事に挑戦するようになったと話す照英さん。一方で、日常生活の中では、衣服やシャンプーなどの日用品は、自分がいいと思った物だけを、何年も使い続けていると話します。そうすることで、いつもベストコンディションの自分でいることができ、精神がぶれないからだそうです。豊かな表情のベースには、常に自信を客観視し、精神も肉体もベストな状態にすることを怠らないストイックさがあるようでした。
タレント・俳優
照英さん
1974年4月4日生まれ、埼玉県出身。1993年の関東学生選手権大会・槍投げで優勝した経歴を持つが、肩の故障が原因で競技生活を断念。モデルとしての活動を経て、1998年『星獣戦隊ギンガマン』のギンガブルー・ゴウキ役で俳優デビュー。その後テレビやCM、映画などで俳優・タレントとして活躍している。