健康ブームの中、注目を浴びつつあるのがグルテンフリー。欧米では健康のための食事法としてすでに定着しています。そもそもグルテンフリーってどんなもの?知れば知るほどメリットばかり!明日から試したくなるグルテンフリーのやり方や効果を米粉マイスター協会理事の陣田靖子さんにうかがいました。
グルテンフリーとは?
グルテンフリーとは、小麦や大麦、ライ麦などに含まれる「グルテン」を制限した食事法のことをいいます。
グルテンは、これらの麦に含まれる2種類(グリアジン、グルテニン)のタンパク質に水を加えて練ることによって変性する粘り気のある成分です。
パン食を中心とするアメリカ国内の調査では、グルテンにアレルギーもつ人は約20人に1人。また、腸内でのグルテンの分解が困難なセリアック病の患者は約130人に1人の割合でいることが明らかになってきました。
そのため、同国ではグルテンにアレルギーをもつ人が安心して食べられるよう、グルテン含有量20PPM以下の食品を「グルテンフリー」と表示するよう定めたというのがもともとの起源でした。今では、その基準がヨーロッパ諸国などでも広まり、定着しています。
残念ながら、日本ではまだ明確な基準がないのですが、最近、ようやくグルテンフリーのパスタなどをスーパーで見かけるようになってきました。もしかしたら、もうすぐ日本でもグルテンフリーの表示基準が定まるかもしれませんね。
なぜ今グルテンフリーなのか?アスリートや
海外セレブも注目するその効果とは?
テニスのジョコビッチ選手や多くのサッカー選手がグルテンフリーを取り入れて「疲れにくくなった」「体が軽くなった」「運動能力が上がった」などの効果を実感しているそうです。また、モデルのミランダカーらもグルテンフリーを生活に取り入れ、ダイエットや美肌効果を実感しているといいます。
では、なぜグルテンフリー生活を送ると体にいいことが起こるのでしょう。
現代人の多くは何かしらの体の不調や痛みを抱えています。
その原因は、小麦の品種改良によって多く含まれるようになったグルテンの影響で起こることがあるのです!
品種改良された小麦粉を過剰に食べることで、人によっては「頭がすっきりしない」「すぐにだるくなる」「疲れやすい」「めまいがする」などの体調不良を起こします。
また、体のむくみや便秘、肌の乾燥など美容に影響を与えている場合もあります。
とはいえ、ほとんどの人は小麦アレルギーというほどではなく、品種改良された小麦などに含まれるグルテンに対する耐性が低いだけなのだそうです。
品種改良は、大量生産を可能にしたり、小麦粉の粘りを強くしたりするために行われてきましたが、そのことで人体に悪影響をもたらす成分が増えるという弊害が出ていることが分かってきました。
ただ、原種の小麦に近い「古代小麦」は、アメリカでは摂取しても影響が少ないと言われています。
グルテンフリーと聞くと、「小麦粉を取ってはいけない」と思うかもしれませんが、一部のアレルギーの人でなければ古代小麦粉の製品は摂取しても問題ないのです。
減量目的のための食事法ではない?
グルテンフリー生活でむくみがとれたり、腸内環境が整ったり、また、グルテンの影響により「食欲中枢が刺激されて、ついつい食べ過ぎてしまう」といったことにもつながります。結果として、食事の過剰摂取が防止され、減量になることも。
血糖値を上げる作用のある小麦粉を取らないことで、インスリンの過剰分泌を抑えるため、血流が改善され、新陳代謝が良くなるという報告もあります。
もともとはダイエットや減量目的のためのものではありませんが、結果的に体質が改善され体重が減ったり、太りにくい体になったりするといった可能性はあります。
精神状態が安定!うつや注意欠陥・
多動性障害にも効果が期待できる?
最近の研究では、うつや注意欠陥・多動性障害(ADHD)への効果も期待されています。ADHDの子どもの多くは、グルテンやカゼインといったタンパク質を分解しにくい体質であることが分かってきました。
グルテンは中枢神経を刺激するため、脳にも大きな影響を与えます。グルテンフリーでは、精神状態が安定したり、集中力がアップしたりといった効果が得られるといわれているのです。
グルテンフリーの正しいやり方は?
まずは2週間試そう!
では、グルテンフリーの正しいやり方とはどんなものなのでしょう。
ほとんどの人はグルテンに対して多少の耐性を持っていますが個人差があるので、中にはアレルギーを起こす人がいることも忘れてはなりません。
そこで、おすすめなのが、まずは2週間小麦粉を米粉などで代用し、グルテンを取らない生活を送ってみることです。
その2週間後に少量のパンやパスタなどの小麦製品を取ってみて、体調がどのように変化するのかを観察します。
小麦製品を取った3日後までに大幅に体調不良が起こったとしたら、グルテンに対しての耐性が低い可能性があります。反対に、あまり体調が変わらなければ、多少のグルテンを取っても問題がないと考えて良さそうです。
やむを得ない事情で2週間の期間中に小麦製品を取ってしまうことがあった場合は、そこから再び2週間グルテンを取らない生活を始めればOKです。
まずは、自分のグルテン耐性を知ることから始めてみましょう!
グルテンフリーで食べていいもの・悪いもの
2週間のグルテンフリーを始めるにあたって、食べない方がいいものを確認してみましょう。
パン、パスタ、ラーメン、うどん、そば(十割そばはOK)、たこ焼き、お好み焼き、餃子、天ぷら、とんかつやコロッケなどの揚げ物全般、シチュー、お麩、スナック菓子、ケーキ、パンケーキ、どらやき、たいやき、ビール、麦焼酎、麦茶など
このほか、カレー(市販のルーを使ったもの)やハンバーグ(つなぎのパン粉や小麦粉)、サプリメント、しょうゆ(たまり醤油や十分熟成されたもの以外)にも含まれていることがあるので、気をつけましょう。
食事を作る際には、小麦粉を米粉やそば粉などで代用しましょう。片栗粉も使用可能です!
グルテンフリーを行うと
禁断症状が現れるって本当?
グルテンフリー生活を始めると大好きなラーメンやパスタが食べられないことで「禁断症状が現れるのでは」と懸念する方もいるかもしれません。
小麦粉を米粉で代用するのがグルテンフリーの基本ではありますが、米粉やとうもろこし粉、雑穀粉などを原料とした麺類も販売されていますし、友人や同僚との会食などグルテンを避けられない状況で多少取ったところで、グルテンに耐性がある方なら全く問題はありません。 無理して我慢するくらいなら、精神衛生上、多少は食べたほうがいいでしょう。
混同しがち?糖質制限との違いにご注意を!
グルテンフリーと混同されがちなのが「糖質制限(ノンカーボ)」。こちらは、ごはんやパン、うどんなどの炭水化物を食べない食事法のことです。炭水化物はでんぷん質で、グルテンはタンパク質。なので、全く違う栄養素なんです!
炭水化物は比較的効率よくエネルギーに変化する、人体にとって必要な栄養素のひとつでもあります。そのため、過度に制限しすぎると、頭がぼーっとしたり、炭水化物制限をやめた途端、大幅にリバウンドしたりといった弊害がおこることもあるのです。
中には、「ダイエットのため」とグルテンフリーと糖質制限を同時に行う方がいるそうですが、かえって体調を崩しやすく、リバウンドもしやすくなるのでやめておきましょう。過度に炭水化物を制限するのではなく、自分の活動量に見合った分の炭水化物を摂取した上で、グルテンだけを抑えた食事を取る方が健康的で理想的といえます。
もともと、お米を食べる習慣を持った日本人。欧米人に比べて長い腸を持つ日本人は、消化がしづらい小麦粉よりお米の方が体質合っているともいえます。グルテンフリーが一時のブームで終わるのではなく、日本人にとってのごはん食を見直すきっかけにもなればよいのではないかと思います。
アレルギーのある方でなければ、時には多少のグルテンを摂取しても問題はありません。また、小麦に比べて大麦やライ麦は品種改良があまり行われていないため、有害なグルテンは少ない場合もあります。とにかく、あまりがんばり過ぎないことも大切です。我慢し過ぎてつらい生活を送るのではなく、楽しみながら挑戦してみるのがいいですね!
まずは、2週間のグルテンフリー生活を送り、体の変化を実感してみてはいかがでしょうか?
お話をうかがった方
米粉マイスター協会理事
一般社団法人 グルテンフリーライフ協会 エグゼクティブ・アドバイザー
一般社団法人 日本腸美人協会 エグゼクティブアドバイザー
陣田 靖子さん
長女の妊娠をきっかけに、2001年から料理研究家として活動を始める。2006年3月「ロハスな食卓」を出版。2006年10月には、日本で初めての米粉だけを使ったパンやお菓子のレシピ本、「米粉100%のパン&お菓子」他6冊を出版。その後も米粉とグルテンフリーの第一人者として、米粉のプロフェッショナル「米粉マイスター」の育成および健康美コーディネーターとして活動している。