毎日、何気なくお風呂に入っていませんか。正しい方法で入浴することで、より健康的に疲れを取るだけでなく、疲れを癒すリラックスタイムにもなります。バスクリンの石川泰弘さんに、よりいい入浴方法について聞きました。正しい入浴で、より健康な体を目指しましょう。
入浴の健康効果3つ
お風呂に入ることがなぜ体にいいのでしょうか。入浴には大きく3つの健康効果があります。
1.浮力によるリラックス効果
体がお湯に浮くことで関節への負担が軽くなり、リラックスにつながります。
2.温熱効果
体をあたためることで血管を広げ、自律神経にも影響を与えます。
3.水圧による効果
体に水圧がかかることで横隔膜が上がって肺が少し小さくなり、心拍数が上がります。それが血流を促進するはたらきへとつながります。
これら3つが相乗効果となって疲れが取れ、良質な睡眠にもつながります。
正しいお風呂の入り方
お風呂の適温は何度くらい?
入浴の際の適温は、基本的には40度のお湯が体にはいいそうです。お湯の温度が高すぎると心拍数が上がって血管が収縮して血圧も上がります。交感神経も優位になるので、寝つきにくくなるおそれがあります。
一方、お湯がぬるめだと、血管が拡張して血圧も低くなり、リラックスしやすくなります。これが、良質な睡眠へとつながります。
ただし、40度というのはあくまで目安。40度で入浴して、熱いと感じれば1度ほど下げ、ぬるいと感じたら逆に1度上げましょう。大事なことは、自分が心地よいと思う温度にすることです。
15分の入浴がオススメ! でも無理は禁物
熱めのお風呂に3分入るより、39~40度くらいのお風呂に長めに入る方が、入浴後も湯冷めしにくいです。1回の入浴時間は、10~15分を目安にしましょう。うっすらと汗が出るくらいがちょうどいいようです。ただし、我慢は禁物です。胸がドキドキするなど心拍数が上がったり、のぼせそうだったらすぐにお風呂から出ましょう。
半身浴と全身浴 どちらが健康的?
「長い時間入浴するなら、半身浴」という方も多いと思います。半身浴はみぞおちから下を中心にお湯に浸かる方法なので、心臓への負担が比較的軽いのが特徴です。その時の気分によって使い分けてもいいようです。
また「長く入浴するとダイエットになる」ことはありません。基本的に、入浴後に体重が落ちても、汗をかいて水分が失われているだけなので、誤解しないようにしましょう。
ベストタイミングでの入浴で良質な睡眠を
日常生活における入浴のタイミングはいつがベストでしょうか。時間があれば食事の後1時間くらい空けて入浴し、1時間以上時間を空けてから布団に入ることです。
人間は、体温上昇後に徐々に体温が下がる過程で眠くなる性質があります。入浴後の体温低下のタイミングを使って就寝すれば、寝つきが良くなるそうです。ただ、仕事や家事などのライフサイクルがあり、なかなか理想通りにはいかないもの。入浴のタイミングにはあまり神経質にならず、自分の生活スタイルに合った入浴のタイミングを見つけルことが大事なようです。
入浴時間が取れないときにおすすめの「手湯」
入浴の時間を取れないときには、手だけでも温めるのがおすすめ。
洗面器などに42度のお湯を入れて10分ほど手を浸けます。手で温まった血液が心臓に届き全身をめぐるので、素早く温まります。これだけでも入浴に近い効果が期待できます。足湯よりも手軽にできそうですね。
暑い時期こそ入浴がおすすめな理由
夏の暑い時期になると、ついついシャワーで済ませがちですが、実際は入浴した方がより健康的だといいます。血液の循環が良くなるので、夏場の入浴もおすすめです。入浴によって体温が上がり、その後スムーズに体温が下がるため、寝苦しい夜でも寝つきが良くなるという効果も期待できます。ただし夏場は体の水分が失われやすいので、よりいっそう水分補給に注意が必要です。
入浴時の注意点
水分補給はしっかりおこなう
入浴によって体の水分が少なくなると危険です。血液の粘度が上がってめまいなどを引き起こす可能性があります。入浴の前後に、しっかりと水分補給をするのが肝心です。その際、お茶やお水など、糖分が比較的少ない水分を取るのがおすすめです。糖分の多い甘い飲み物は胃で消化しなければならないため、水分の吸収が遅くなるからです。ただし、運動後の入浴などの際は、特に水分を速やかに補給した方がいいので、イオン飲料などをうまく活用しましょう。
真冬と飲酒後の入浴にご用心
入浴中の事故は年間約1万7000件ほどと、少なくありません。そのほとんどが冬場の高齢者です。中でも多いのは「ヒートショック」。これは、暖かい場所から寒い場所に行くことで急激に血圧が変化することで起こります。入浴中の事故を減らすには、水分補給に加えて気温差にも注意が必要です。「できれば浴室暖房をかけましょう。もし自宅になければ、しばらくの間、浴槽のふたを開けて浴室全体をあたためることが大事です」(石川さん)。部屋と浴室の温度変化を少なくすれば、血圧の乱高下を抑えられます。
同様に、飲酒後の入浴も控えましょう。血圧の変動が大きくなるため、ふらつきなどの原因になるからです。入浴するのであれば、酔いを冷ましてから十分に水分を取るのが肝心です。
月経時の入浴はOK
「月経時は入浴しない」という女性は少なくありません。水分をきちんと取るなどの注意をしていれば、生理中であっても特に入浴を制限しなくていいそうです。家族がいてお湯が気になるようであれば、入浴の順番に気を付けてみましょう。
お風呂の必須アイテム「入浴剤」と種類
質のいい入浴に欠かせないアイテムが、温浴効果を高める入浴剤です。一口に入浴剤と言っても、さまざまな種類があります。ここでは効果の違いで大まかに5つに分類しました。
(1)無機塩類系
温泉由来成分である芒硝(ぼうしょう、硫酸ナトリウム)と重曹(炭酸水素ナトリウム)などからなる。
(2)無機塩系(炭酸ガス)
炭酸ガスを多く含んだ入浴剤。炭酸ガスの効果によって血管を拡張し、血行を促進する。肩こりや腰痛といった症状を和らげる効果が期待できる。食事後に入浴すると、血糖値の上昇を抑えられるという研究データもある。
(3)生薬系
生薬に含まれる成分の働きと、独特の香りが特徴的。生薬の種類によって効果が様々で、鎮痛や抗アレルギー、消炎などが期待できる。
(4)スキンケア系
保湿成分をメインにした入浴剤。皮膚のかさつきによるかゆみを低減できる。スキンケアをしにくい背中などのメンテナンスにも効果的。
(5)清涼系
重曹と清涼成分(メントールなど)により、実際に体温を下げているわけではないが、さっぱり感があり夏場や暑い時期に人気がある。
その日の気分や体調に合わせて、入浴剤を使い分けるのがおすすめです。座りっぱなしで血行が良くないのであれば無機塩系(炭酸ガス)、寒い季節にあったまりたいなら無機塩類系、お肌のカサつきが気になるようならスキンケア系と、用途に合わせて選べると入浴がより一層楽しくなりますね。
入浴剤と洗濯・追い炊き機能
「お洗濯に使いたいので入浴剤は使わない」「家族が入浴する時間がバラバラなので浴槽の追い炊き機能をよく使うが、入浴剤を使っていいのか不安」という方も多いはず。最近の入浴剤のほとんどは、このような洗濯・追い炊き機能、風呂釜への影響などについて記載されています。例えば「風呂釜や浴槽を傷めないよう、硫黄成分を含んでいません」「残り湯は洗濯に利用できますが、すすぎは清水で行ってください」などの注意書きが書いてあります。気になる入浴剤があれば、ラベルの表示を見てみましょう。
入浴後の注意点「肌への水分補給」と「汗冷え」
入浴後に気を付けなければならないのが、水分補給です。知らず知らずのうちに汗をかいているので、入浴後は身体中の水分量が下がっています。そのため、肌の水分量も入浴前より下がってしまいます。スムーズな水分補給を心がけるとともに、お肌への保湿も欠かさないようにしましょう。 特に、入浴後の10分間は肌にとってのゴールデンタイム。水分を吸収しやすく保湿に最適です。また、湯冷めをしないように暖かい服を着るのはいいですが、汗をかいたままだと、かえって体が冷えてしまいます。こまめに汗を拭き取り、汗冷えを防ぎましょう。
まとめ
入浴にはリラックスや血行促進などの効果があり、うまく活用すれば良質な睡眠へとつながります。40度前後のお湯に10~15分を目安に入浴し、しっかりと水分補給をするといいようです。
入浴については近年さまざまな分析が進んでおり、「これが正しい入浴方法」というのは、時代によって少しずつ変わっています。また、お湯の適正温度や入浴時間、タイミングなどはあくまで目安。人によって自分が心地よい温度や時間などが異なるので、自分に取ってベストな入浴方法を、少しずつ条件を変えてみながら探っていくことが大切です。
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