誰もが気になる将来の「お金」のこと。本連載はその不安や疑問について、働く女子マネ子が、お金を積み立てさせたら日本一と評判の積立王子こと、セゾン投信の中野晴啓社長と一緒に考えます。今回は、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)のポートフォリオの作り方と、60歳以降の運用について紹介します。
マネ子(30歳・独身)
「将来のために貯金しなきゃ」と、漠然と感じているが、社会人になって一人暮らしを始めてからなかなか貯められずにいる、働く女子。
マネ子 イデコの口座を開設して、どの運用商品を選ぼうかいろいろ見ているのですが、どれを組み合わせたらいいのか迷ってしまいます。
中野 運用商品の組み合わせを「ポートフォリオ」と言いますが、投資信託を選ぶのであれば、ある程度絞り込んだ中から1つでいいと思いますよ。
マネ子 たった一つでいいんですか!?
中野 はい。数多くの投資信託があると思いますが、何をどう組み合わせればいいのかは、よほど詳しい人でない限りは非常に難しいでしょう。ポイントは「長期で」「グローバルに分散して」積み立てることですから、そうした投資信託を選べば、自分でポートフォリオを組まなくても、1本で済んでしまうのです。
自分でポートフォリオを組む必要はない
私は、世界中の株式や債券に分散投資するグローバル・バランス型の投資信託か、世界中の株式に分散投資するグローバル株式型の投資信託から選べば、イデコの運用は十分だと思っています。そうすることで、自分でポートフォリオを組む必要がない上に、定期的にリバランスを行う必要もありません。
イデコは長期で運用するものですし、初めて資産運用をする方にとっては、運用中の煩雑さをできるだけ軽減できるものの方が合っているのではないでしょうか。持っていることを忘れるくらいの運用商品を選ぶのがいいと思います。
グローバル・バランス型も、グローバル株式型も、世界中の市場に分散投資するものですから、あえて「日本株に投資したい」という方には向いていません。
ただ、私が世界中への分散投資をおすすめするのは、世界経済には今後の成長が見込めるからです。日本は人口が減少し、経済の先細りは明らか。日本企業がこの先どんどん成長することは考えにくいでしょう。日本株だけに投資することは、お金を「育てる」上で、合理的とは言えないのです。
資産運用は60歳がゴールではない!
さて、運用を続けていよいよ60歳になり、「やっと受給できる!」と思うかもしれません。確かに、イデコの制度としては、「積み立て期間は60歳まで」とされています。ただ「漠然とした不安」を感じている生活は、まさに60歳を超えて、定年退職した場合に始まるのです。そんなときに運用をやめてしまうことは、果たして得策なのでしょうか。
イデコは60歳になったからといって、すぐに受給しなければならないわけではなく、60〜70歳までの10年間で受給の時期を選ぶことができるのです。
積み立て期間が終了したとしても、投資してきたものをすぐに受け取って「これだけ資金ができたから、銀行に預金しよう」と考えているのだとすれば、運用する前の、稼いだお金をせっせと銀行預金していたときとなんら変わりありません。運用をやめてしまえば、そのあとは預金を切り崩していくしかないのですから、また不安にさいなまれることでしょう。
イデコでの積み立ては終了しても、その後も70歳になるまでは運用を継続することができます。制度上、「60歳がゴール」と考えてしまいがちですが、死ぬまでお金の心配をせずに暮らせるためには、運用を継続していくことをおすすめします。
次回は、つみたてNISAについてお話ししたいと思います。
「積立王子」こと
セゾン投信
中野晴啓 代表取締役社長
1987年に大学卒業後、アパレル業に従事したいとの思いでセゾングループに入社するが、入社3日後に金融運用会社に配属される。16年間ファンドマネージャーを務め、2006年にセゾン投信を設立。年間150回に上る講演を行っており、メディアにも引っ張りだこ。