誰もが気になる将来の「お金」のこと。本連載はその不安や疑問について、働く女子マネ子が、お金を積み立てさせたら日本一と評判の積立王子こと、セゾン投信の中野晴啓社長と一緒に考えます。今回は、つみたてNISA運用中の注意点についてご紹介します。
マネ子(30歳・独身)
「将来のために貯金しなきゃ」と、漠然と感じているが、社会人になって一人暮らしを始めてからなかなか貯められずにいる、働く女子。
マネ子 つみたてNISAでは、国際分散型の投資信託を1本選び、いよいよ運用をスタートしました。「長期で運用」と分かってはいますが、日々の運用状況が気になってしまいます。
中野 運用を始めた人の中で、数年のうちに売ってしまうケースは2パターンあると思います。株価が上がっているときに「利益を確保しなきゃ」というパターンと、株価が下がっているときに「これ以上下がったら大変だ」というパターンです。
マネ子 でも、それだと、つみたてのための運用ではなくて、通常の株式の売買と変わらないですよね。
中野 そう、まさに投機(ギャンブル)です。「売らなきゃ」という気持ちが出てきているなら要注意。今一度、なぜつみたてNISAを始めたのか、初心に立ち返ってみましょう。
つみたてNISAは最長20年間の非課税制度だと、第10回でお話ししました。「20年間は続けてください」という、国からのメッセージです。ですから、日々の運用の上下は、20年間で見れば、まったく気にしなくていいのです。私自身もつみたてNISAを投資信託で運用していますが、始めてから運用成果はほとんど見ていません。
長期で運用すると決めたなら、「いつ買って、いつ売るか」ということは考えずに、自動的に「買い続ける」ことになります。価格が下がると「どうしよう」と不安になったり、「損したくないから売っちゃおう!」と売ってしまう方が多いですが、慌てて売るのは禁物です。
落ち着いて考えてみましょう。価格が下がった分、同じ金額でより多くの投資信託を買えるのです。悲観する必要はなく、むしろ安く買えたことを喜ぶべきなのです。下がっているときは「仕込み時期」と考えて、「慌てず騒がず」の心持ちが大切です。
「複利」といって、運用で出た利益で運用商品を買っていくことになるので、1年でお金を育てた分よりも、20年で育てた方が大きくなります。雪だるまを転がして作るときのことをイメージしてください。表面積が大きくなるほど、サイズが大きくなるスピードも速くなりますよね。
運用も同じで、利益が増えてくるほど、運用できる金額も増えるのでさらに増えやすくなるのです。
日々の運用が気になるかもしれませんが、大切なのは素直に20年間続けることです。毎日見ることで不安になったりするのであれば、価格の上下は見ない方がいいでしょう。
全12回にわたって、将来のお金を「育てる」ことについてお話ししてきました。イデコもつみたてNISAも、国民一人一人に豊かな生活を実現してほしいという思いで始まった制度です。それぞれの仕組みをきちんと理解してやり遂げることで、きっと今の「漠然とした不安」は軽くなるはずです。20年間、定年までがゴールと決めずに、細く長く運用を続け、豊かな人生を送られることを願っています。
「積立王子」こと
セゾン投信
中野晴啓 代表取締役社長
1987年に大学卒業後、アパレル業に従事したいとの思いでセゾングループに入社するが、入社3日後に金融運用会社に配属される。16年間ファンドマネージャーを務め、2006年にセゾン投信を設立。年間150回に上る講演を行っており、メディアにも引っ張りだこ。