掃除しているのに、なぜかトイレが臭う!その原因は尿石やアンモニアかも。悪臭は、掃除の際に見落としがちな箇所や、たまったほこりなどに付いて発生します。上手な掃除方法や対策などについて、トイレ診断士1級の鈴木信宏さんにお話をうかがいました。
トイレの臭いの原因は主に2種類
トイレの臭いの原因は大きく2つに分けられます。1つは使用後の臭い。もう1つは、掃除の際に見落とした汚れを発生源とした「汚れ」による臭いです。
きれいに掃除しているつもりでも、意外と見落としがちな箇所や手の届きづらい箇所があったりするもの。主に見落としがちなのは、
・便器と便座の隙間の接合部分
・便器のフチ(リム)、温水洗浄ノズル付近
・脱臭フィルター
・床、壁
です。水の流れない箇所には汚れがたまります。床や壁も要注意ですね。
見落としがちな点1・便座の接合部分
便座の接合部分とは。洋式トイレは主に便器本体が陶器、便座が樹脂などでできています。それらはボルト等で固定されているため、便器と便座の間には、少なからず隙間があります。ワンタッチで便座が外せるものや、ボルトを緩められるものもあるので、隙間を清掃するのもよいと思います。
見落としがちな点2・リムや温水洗浄ノズル付近
便器のフチの裏側のリムと呼ばれる部分や温水洗浄ノズルも、見落としが多い場所ですね。便座を掃除するときは、小さな子どもに語りかけるように目線を低くして行うと見落とす汚れが少なくなります。ノズルは機種によって、掃除の方法が異なります。便座の取扱説明書を参考に、お手入れをしましょう。
見落としがちな点3・床、壁に染みついたアンモニア
男性が立って小用を行うと、たくさんの尿が飛び跳ねて床や壁に染みついていきます。女性が用を足すときも跳ねないわけではありませんが、男性の場合は約1.6mも遠くに跳ねるといわれています。男性が便座に座って用を足すことで、「飛び跳ね」はかなり抑えられます。
見落としがちな点4・脱臭フィルター
最近の便器には脱臭機能が搭載されています。脱臭フィルターもお手入れが必要なのをご存知でしょうか?ほこりなどがつまると、脱臭効果が低くなる上に、そこから悪臭が放たれることも。脱臭フィルターは取り外して、乾いた歯ブラシなどでほこりを取り除くか、水洗いをして乾燥させるなどのメンテナンスをしましょう。
尿の成分ってアンモニアじゃなかったの?
トイレのあの「ツン」とするような臭いはアンモニア臭と呼ばれます。そこから誤解されがちなのですが、尿の成分=アンモニアではありません。
実は尿の成分は約97%が水、残りの約3%のうちのほとんどが尿素と呼ばれる成分です。
その尿素は時間が経過していくうちに二酸化炭素とアンモニアに分解されます。ここで初めてアンモニアが出てくるわけです。
つまり、壁や床などに尿が飛び跳ねた直後は、まだ、尿素のアンモニアへの変化は始まっていません。壁の見えない汚れを放置したり、床の隅にほこりをためてしまったりすると、尿の成分がアンモニアに変わり、臭いを放つのです。
臭いの原因?尿石とは?
トイレの臭いの原因として、もう1つ挙げられるのは尿石と呼ばれるものです。
あまりなじみのない言葉ですが、尿石とは、どういったものでしょうか?
尿石は、体内で吸収されなかったカルシウムからできるといわれています。
そもそも、カルシウムは人体の中で非常に吸収されにくい栄養素。吸収されなかった分は尿として排泄されてしまいます。流れ出たカルシウムの成分は、体内では液状の物質なのですが、ある程度アンモニア成分が存在するトイレの中では、石化して固まり、尿石に変化するのです。
最近の便器は、表面がつるつるとしていて汚れも洗い流しやすくなっています。逆に尿石の表面はスポンジのように細かい穴が無数に開いていて、尿素を分解する細菌にとっては溜まりやすい居心地のいい環境となります。
つまり、少し汚れを放置した便器に一旦、尿石がこびりついてしまうと、アンモニアの住処ができます。それによりアンモニアが増えれば、さらに尿石が固まってこびり付くという悪循環が生まれるのです。
しつこい尿石を落とすには
酸性の洗剤を使って尿石を除去
尿石は酸性の洗剤で少しずつ溶かすことができます。市販されている洗剤はどれも非常に優秀です。用法通りに使えばほとんどの汚れは除去できます。
ただし、酸性洗剤の使用時は、換気をしながら行ったり、他の洗剤と混ぜたりしないように特に注意しましょう。
また、便座を傷める可能性がありますので、便座部分には洗剤がかからないようご注意を。
しつこい尿石はシップ式も有効
トイレットペーパーを便器内に敷き詰め酸性の洗剤をまいておくことで洗剤を尿石に染み込ませることもできます。
ただし、あまり長時間放置せずに数分で流しましょう。プラスチック、金属部分は傷める可能性がありますので、湿布しないようにしてくださいね。
こすり過ぎない
トイレはこすって汚れを落とすもの?いえいえ、そんなことはありません。優しくなでる程度で、洗剤の泡を隅々まで届ける清掃を心がけてみてください。
一番の臭い対策は放置しないこと。
できる範囲で毎日掃除
臭いの原因であるアンモニアや尿石を作らないようにするには、まず、定着する前に汚れを除去することが大事です。朝の出かける前の数分など、短時間でできる程度の掃除を日ごろから心掛けるのがよいでしょう。
「湿気がこもるから」と換気のためにトイレのドアを開けておく必要は特にありません。閉められるところは閉めておくことが正解です。
また、消臭剤や脱臭機等の設置も、ないよりあった方が効果があるといえます。
掃除のコツ。当たり前だけど、ちょっとしたこと
家庭のトイレ掃除では、多くの方が拭き掃除をすると思いますが、左右に往復させて行ったりしていませんか?掃除の基本動作、この機会に見直してみましょう。
基本動作の原則 | 理由 |
---|---|
上から下へ | トイレでは、なんと床上80cm以下が特に汚れているそうです。ほこりや水を落とす際に汚れが拡散するのを防ぐためには上から下が鉄則です。 |
きれいなところから汚れたところへ | 汚いところからきれいなところに汚れを広げてしまわないために、きれいな方から汚い方向へ拭いていきましょう。 |
奥から手前(ドア方向)へ | 奥や角、便器の背後にはほこりがたまっている場合があります。奥や角にためないために、出口方向に向かって掻き出しましょう。 |
一方向拭き | ウェットクロス等で一度拭き取った汚れを再び別の場所に戻さないためには、往復ではなく「一方通行」で拭きましょう。 |
トイレの場合、床から80cmを境界として上下で汚れ度合いが違います。
壁掃除では、ウェットクロスを左右にスライドさせながら拭くのではなく、上から下に拭いたら、一度、壁からウェットクロスを離し、拭く面を変えたりしながら、天井方向から床方向に向かって拭いていきましょう。
まとめ
トイレの掃除で一番大切なのは、こまめに掃除をすることです。
臭いの原因となるアンモニアや尿石に変化する前に取り除いていきましょう。前述したとおり、尿が飛び跳ねた直後はまだ臭いを発する成分はなく、ほぼ水分です。
数カ月に1度、百点満点の掃除をするより、できる範囲でいいので、毎日60点くらいの掃除をするのがコツなんです。
完璧にピカピカにしようとか、ゴシゴシこすって汚れを落とそうといった考えは一旦捨てて、無理のない程度の掃除を日々心掛けて、臭いの原因を抑えましょう。
お話をうかがった方
厚生労働省認定社内検定トイレ診断士
株式会社アメニティ
リピート営業部 部長
鈴木信宏さん