積立王子がこっそり教えるおカネが“育つ”レシピ vol.3 「将来のお金の相談」は銀行にするべからず

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2018.03.22
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連載第2回では、将来の貯蓄について、具体的な数字に置き換えて紹介しました。今回は、みなさんが何気なく利用している「銀行」について、改めて考えてみます。その上で、お金のことは誰に相談したらいいかについてお話しします。

マネ子(30歳・独身)

マネ子(30歳・独身)

「将来のために貯金しなきゃ」と、漠然と感じているが、社会人になって一人暮らしを始めてからなかなか貯められずにいる、働く女子

 

 

身近な金融機関がお金の専門家とは限らない

崩れそうな金融機関

マネ子 前回のお話で、老後にどれだけのお金が必要になるかのイメージがわきました。お金を効率的に増やす方法を知りたいので、メーンバンクにしている○×銀行に相談してみようと思っています。

中野 確かに、銀行は自分のお給料を預けたりと、お金に関して身近な存在かもしれません。けれど、必ずしもマネ子さんの「お金の相談相手」としてふさわしいわけではないかもしれませんよ。

マネ子 えっ、でも保険や投資信託などの商品もあるようなので、お金のことはいろいろ聞けそうだと思いました。

中野 マネ子さん、すでに銀行の営業戦略にはまってしまっていますね。「銀行はお金の専門家だ」と思いこんでいると危険です。今回はまず、銀行が自分にとってどのような存在なのかを、冷静に考えてみましょう。

 

「銀行員はエリート」は過去のもの?
保険や株を販売している理由を考える

マネ子さんのように、「お金のことを相談するなら、まず銀行に行く」という方は非常に多いです。しかし、「今はこれがおすすめです」と、勧められるがままに投信を買って大損した、という方が少なからずいるのも事実です。

 
銀行

なぜ、お金のことを銀行に相談しようと思ってしまうのでしょうか。それは高度経済成長を経験した親世代から「銀行員はエリート」とか「銀行は他の民間企業よりもエラい存在だ」と刷り込まれてしまっているからなのです。

高度経済成長期には、企業は銀行からお金を借りて資金調達をしていました。いまでは、株式などの資本市場が大きくなったので、株式上場して信頼される仕事をしていれば資金調達できるようになりましたが当時は資本市場が未熟でした。だから企業は、銀行に頭を下げてお金を調達するしか方法がなかったのです。銀行はまさに、20世紀の日本経済の支え手でした。

 

実際に銀行員になるのは大変なことでしたし、社会的に高い地位にあったのです。こうした背景から「銀行は立派な存在だ」という銀行神話ともいうべき思い込みが、今でも根強くあるのです。

悩むサラリーマン

しかし今はどうでしょう。銀行の役割というのは、依然としてお金を企業に貸し出して、世の中を豊かにするのが本来の役割ですが、先ほどもお話ししたように、資金調達を資本市場からできるようになった今日では、その需要は減っています。さらに現在の日本は成熟社会です。これまでの銀行のビジネスモデルは衰退し、今や斜陽産業とも言えます。だからこそ、保険や投資信託など、あの手この手で金融商品の販売による手数料獲得に躍起になっているわけです。

日本経済の担い手の主役ではなくなりつつある今、銀行は他の民間企業となんら変わりない一産業にすぎません。融資の専門家であっても、投資のプロではないと言えるでしょう。そうした相手が、本当に「親身になって、お金の相談に乗ってくれる存在」なのでしょうか。彼らも自分たちの利益を確保するのに必死ですから、「投資の相談をしよう」とか「銀行に教えてもらえば安心」とは考えないのが無難でしょう。

 

その情報は本当に価値がある?
無料コンサルの落とし穴

書籍

では、「誰に相談したらいいのか」とよく聞かれますが、この質問こそが思考停止してしまっていると言えるでしょう。「自分ではよく分からないから、詳しい誰かに『こうするべきだ』と決めてほしい」という気持ちの表れであり、人任せにしている証拠です。

まずは自分で本を読んだり、セミナーに出席するなどして勉強し、知識をつけなければなりません。その上で「この人の話は信頼できそうだ」というところに、相談したらいいのです。

そして日本人は何でも「タダで教えてもらおう」と考えがちですが、この点にも注意が必要です。情報というのは、知的財産なわけですから、本来タダで得られるはずがありません。価値がある情報であればなおさら、お金を払わなければならないはずです。

フィナンシャルアドバイザー

アメリカでは、独立フィナンシャルアドバイザー(FA)という、お金についてアドバイスをする職業が普及しています。彼らに相談するときには、アドバイス料を支払わなければなりませんが、その対価として顧客の立場に立ってもらえます。そしてフィーを取る彼らはそれだけの知識、価値ある情報を持った専門家だということです。日本にもまだ少数ですが、アドバイス料を取って中立的に顧客のコンサルティングをするFPさんは存在しています。裏を返せば「無料で教えます」とうたっているFAは、怪しいと思ってほぼ間違いないので気をつけましょう。

 
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次回は、投資と投機の違いについてお話ししたいと思います。



『おカネが育つレシピ』バックナンバーはこちら

セゾン投信代表取締役社長 中野晴啓

「積立王子」こと
セゾン投信
中野晴啓 代表取締役社長

1987年に大学卒業後、アパレル業に従事したいとの思いでセゾングループに入社するが、入社3日後に金融運用会社に配属される。16年間ファンドマネージャーを務め、2006年にセゾン投信を設立。年間150回に上る講演を行っており、メディアにも引っ張りだこ。「積立王子」の異名を持つ。

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