会話とはエネルギーを交換すること
直のコミュニケーションを楽しんでください

HUMAN

2017.05.10
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元日本テレビアナウンサー。その後、フリーアナウンサーとしてテレビなどで活躍するかたわら、『魚住式スピーチメソッド』としてスクールや講演といったスピーチレッスンを数多く手掛ける魚住さん。話し方のプロフェッショナルとして活躍するようになった原体験や喋り方への思い、向き合い方についてお話をうかがいました。

フリーアナウンサー
ボイス・スピーチトレーナー
朗読トレーナー
魚住りえさん

言葉に魅せられアナウンサーという仕事へ

――アナウンサーとして知名度がある魚住さんですが、
いつ頃からアナウンサーを目指していたのですか?

実は私、もともとはピアニストになりたかったんです。3歳からピアノを始めていたのですが、クラシック音楽は厳しい世界。ある時、「ピアニストは無理だな」と思ってしまいました。けれども、音楽のように自分で何かを表現し、人に伝える仕事には魅力を感じる……。そんな中で自分には何ができるだろうと考えたとき、浮かんだのが声を仕事にすることでした。言葉はリズムとメロディで作られている、考え方によっては音楽に非常に近いものです。国語の授業での朗読の際に周囲からよく褒められていたこともあり、声を使う仕事の中でもとりわけアナウンサーを強く意識するようになりました。

――魚住さんの数あるお仕事の中でも特に印象的なのが、
テレビ東京のドキュメンタリー番組
『ソロモン流』のナレーションです。

『ソロモン流』は、フリーに転身した直後から始まった、私にも印象的なお仕事ですね。放送の何カ月も前から対象者に密着取材し、その内容を実際に放送される1時間以内に凝縮する番組です。ナレーターの私に何かアクシデントがあって放送ができなければ、それまでに費やした時間も出演者・スタッフの努力も全て水の泡。風邪はもちろん、喉の調子を崩すことも許されない……。前身の番組から足掛け10年にわたって放送は続いたのですが、幸いにも、番組放送期間中に体調を崩したのはたったの1度。その時はナレーションの収録日をずらしてもらい、なんとか事なきを得ましたが、常にプレッシャーと戦う日々でしたね。

自分の得てきたノウハウを
社会に還元したいと思い
スクールを開校

――現在は、『魚住式スピーチメソッド』として
喋り方のスクールや講演も数多く手がけていらっしゃいますね。

喋り方について、「早口を直すにはどうすれば良い?」「声が聞き取りづらいと言われるんだけど」など、アドバイスを求められる機会があり、「『喋り方』を良くしたいというニーズは多いのでは」と思ったことがスクール開校のきっかけです。
年齢的に「これまでのように『受ける』仕事をするのではなく、もっと能動的な仕事をしたい」「自分の得てきたノウハウを社会に還元し、人のために役立っていきたい」と考えだしたタイミングということもあり、「とりあえず挑戦してみよう」という気持ちでしたね。

相手に気持ちよくなってもらう
おもてなしのような気持ちが
心地よい会話のポイント

――『魚住式スピーチメソッド』では
どのようなことを教えているのでしょうか。

私たちが何も意識せずに出している声は、いわば「すっぴん」の状態。明るい話題であれば明るい声を、暗い話題では落ち着いた声を、というようにTPOに合わせた声を作ることは、会う人や場所によってメイクや服装を変えるようなもの。その場にふさわしい装い・ふるまいは、コミュニケーションや人間関係を良くすることにつながります。

――確かに、喋り方というのは場に合わせて
使い分けをする必要がありますね。
そのほか、人とコミュニケーションを取る際に大切なことはありますか?

人は、自分の話を誰かに聞いてもらいたがるもの。人と会話をするとき、日本人は6:4くらいの割合で、聞く方を重視するのが良いと言われています。相槌を打つときに声を出す人も多いですけれど、実は黙って相槌を打つ方が「あなたの話を集中して聞いています」という雰囲気をつくれます。

また、自分から質問するのも大切です。「質問しよう」と心がければ、自然と相手の話も真剣に聞くようになる……そうすれば、自ずとコミュニケーションも深まっていきます。逆に、自分が喋るときは伝えたいことが100まであっても、そのうちの「10から30が伝われば良いや」とゆったり構えてください。自分が自分がと前に出るよりも、「相手に心地よくなってもらおう」というおもてなしの心を持つのが、人と会話をするときのコツですね。

言葉をやりとりする
面白さや温かみを
大切にしていきたい

――喋り方を変えたいと思ったとき、
どのようなことを意識していけば良いのでしょうか。

まずは、自分の声を録音して、客観的に聞くことから始めてみましょう。それだけでも、自分の話し方の傾向がつかめますし、改善のきっかけにもなっていきます。
ハキハキした喋り方は、それだけで人に好印象を与えるものです。腹式呼吸を意識すれば、聞き取りやすい「通る声」を出すことができます。話しながら口角をあげると自然と声も柔らかくなるので、意識してみてください。腹式呼吸はインナーマッスルを、喋ることは表情筋を鍛えることにもつながるので、アンチエイジングや小顔効果も期待できますよ。
人とお喋りをすると、楽しい気分になったり悩みが晴れたりしますよね。私は、会話とは相手とエネルギーを交換する行為だと考えています。メールやSNSなどが発達し、コミュニケーションの方法は多種多様になってきました。
だからこそ、直に言葉をやりとりする面白さや温かみはこれからも大切にしていきたいものです。言葉を交換することは、互いのエネルギーというプレゼントを交換し合うものだと思って、周囲の人達との会話を楽しんでいただければと思います。

[聞き手から]


魚住さんがフリーアナウンサーへの転向を決意したのは「一度きりの人生なのだから、たとえ仕事がなくなりアルバイトで食いつなぐようになったとしても後悔しない」という思いからだったそうです。インタビュー中の自身の言葉や喋り方を大切にしている様子から、プロフェッショナルとして仕事に向かうしなやかな強さや真摯な姿勢が垣間見えました。

魚住りえさん

95年、日本テレビに入社。報道番組からバラエティーまで幅広く活躍。04年からフリーアナウンサーに。テレビ東京『ソロモン流』(前身『ソロモン王宮』)など各局のテレビ番組、CMのナレーション等も数多く担当。近年では約30 年に渡る活動経験を活かし『魚住式スピーチメソッド』を立ち上げ、話し方を磨くための指導・講演を数多くを行っている。著作に15万部を超えるベストセラーとなった『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』(東洋経済新報社)、『10歳若返る!話し方のレッスン』(講談社)のほか、最新著書に『たった1分で会話が弾み、印象まで良くなる聞く力の教科書』(東洋経済新報社)など。

魚住りえさん公式ブログ
https://www.rie-speech.jp/blog/
魚住式スピーチメソッド
https://www.rie-speech.jp/

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