作品を見る人の心を明るくする 注目のイラストレーターの素顔

HUMAN

2018.02.08
アイキャッチ画像

アクリル絵の具を使ったやわらかいタッチで、ユニークな人物たちを描くイラストレーターの黒田愛里さん。雑誌の挿絵を描くなど活躍されています。2017年8月には、飲み物が好きなキャラクターをテーマにした個展を開催。独自の世界観を発信しました。そんな黒田さんが、独立するまでの苦労話やこれから取り組んでいきたいことなどをお聞きしました。

イラストレーター
黒田愛里さん

目標を失った浪人時代
好きなバンドきっかけに「描く」ことへの思い再燃

―― 黒田さんのイラストは、一つの作品にたくさんの人物が
描かれていることが多く、見ていて飽きません。作品作りのテーマ設定や
インスピレーションはどのようなところから得ていますか。

街を歩いていて印象に残ったことや、自分の身の回りにいる人の変わったクセなどをテーマにすることが多く、一連の作品に、1つのストーリーを持たせています。

2017年8月に開催した個展「Nommy(ノミー)」も、私の友人からインスピレーションを得ました。1日に2リットルの水を飲み干す友人がおり、それを知った時に「そんなにたくさん飲むなんて!」と、すごく驚いたんです。1日2リットルの水分補給は特別なことではないですが、そのときはあまりにも衝撃的で、それをテーマにしました。

飲み物が大好きな男の子「Nommy(ノミー)」を主人公にしたイラスト

2017年8月の個展の様子。これまでの作品も展示した

このほかにも、小学校時代に365日同じポロシャツを着ていた友人から着想した「モケモケくん」というキャラクターが家の中で遊んでいるというストーリーの作品や、ハンガリーに住む叔母家族をテーマにした作品など、身の回りからアイデアを拾うことが多いですね。

―― イラストレーターになることは、幼いころからの夢だったのですか。

子どもの頃の夢は、サッカー選手でした(笑)。小学5年生から高校1年生までサッカーチームに所属しており、小学校の卒業作文にも「女子サッカー選手として活躍したい」と書いていました。

絵を描くことは幼少期から好きで、授業中はよくノートに落書きしていましたね。友人の似顔絵を描いたときに喜んでもらえたのはうれしかったですし、私の絵を見た高校の先生が「美大に進学したらどう?」とすすめてくれて。そんな言葉も後押しになって、1年半浪人して美大に入学しました。

小学生時代はサッカー選手が夢だったことを振り返る黒田さん

―― それまでは趣味だったイラストを、
学問や仕事として描くことになったときに、
いやになったりしなかったのですか。

粘土を使って作ったクレイアートも手掛ける

浪人していた最初の半年間は予備校に通っていたのですが、基礎の講義に全く興味が持てず、友達もできなくてすべてがいやになってしまったんです。絵を描くモチベーションはなく、予備校をやめて目標もないままフリーターをしていた時期もありました。そんなとき、好きになったバンドが東京工芸大学出身だということを知り、やっぱり自分は絵を描きたいことを思い返して工芸大を目指すことにしました。1年後に無事入学できて、それ以降は制作に対するモチベーションを維持しています。

部屋を整頓することで心もスッキリ

アイデア出しは、カフェなど外でやりますが、制作作業は音楽やラジオを聴きながら自室で行っています。朝起きたら植物に水をやってから体のストレッチ。そのあと部屋の中を掃除してから描き始めます。学生のときは、部屋はいつも散らかっていて、その空間で描いていました。でも昔から母に「部屋が散らかっている人は、頭の中も整理されていない」と言われていて、あるとき一念発起して片付けたんです。

制作は、部屋を整頓してから行っているという

すると思っていたよりも気持ち良くて、心がスッキリしました。散らかっている部屋では、何か大切なことがあっても見落としてしまっているかもしれない、とも考えるようになりました。このサイクルが、描くときのモチベーションのベースになっているような気がします。

―― 今後、やってみたいことや挑戦したいことはどのようなことですか。

黒田さんは商業施設などの装飾を手掛けていくのが目標と話す

私の絵を見て「元気をもらえる」といってくださる方が多く、そのことが何よりの励みになっています。最近は広告など挿絵のお仕事をいただくことが増えてきましたが、今後はファッションビルなど、多くの人が目にする商業施設の装飾を手掛けて、人々の心が明るくなるような作品を作っていきたいです。

[聞き手から]
イラストレーターの夢を目指して売り込み活動していた当時は、「イラストレーションを通じて何をしていきたいのか」が分からず、大泣きして悩んだこともあったそうです。そんな時期も乗り越えて、以前よりも作風が明るくなったと話していました。見る人を愉快な気持ちにする作風の背景には、そんな経験があってこそなのかもしれません。

IENAKAの姉妹メディアで、東急ベルの情報誌「家ナカ 8号」でも、表紙を飾っていただきました

イラストレーター
黒田愛里さん

1989年、東京生まれ。 2013年に東京工芸大学芸術学部谷口広樹イラストレーション研究室を卒業後、イラストレーターとして活動を開始。第10回TIS公募で入選、 第11回TIS公募で審査員賞を受賞し、2014年よりTIS会員に。 「anan」「OZ magazine」などの雑誌や、お台場ヴィーナスフォートの広告、国内外のアパレルメーカーとのコラボレーションなど幅広く手がけている。

pagetop