あなたの想像力がカギ! 家族と自分をノロ・ロタの感染から対策法

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2017.02.07
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冬になると流行するノロウイルスやロタウイルスといった“感染症”。なんとなく「人から人にうつる厄介な病気」と感じている人もいるのでは? 実際、感染症は予防策を知っておかなければその名の通り誰かにうつってしまう病気のひとつ。そこで、感染症の予防と、万が一かかってしまったときの対策について、順天堂医院の感染管理認定看護師 小松﨑さんにうかがいました。

順天堂医院
医療安全推進部 感染対策室 主任
感染管理認定看護師
小松﨑 直美さん

そもそも“感染症”ってどんな病気なの? 症状は?

感染症とは、ウイルスや細菌・カビなどの病気を引き起こす「病原体」が体に入って引き起こされる病気です。いわゆる風邪やインフルエンザ、冬になると流行するノロウイルスやロタウイルスがこれにあたります。「感染症は飛沫感染や接触感染など、何らかの方法で病原体が体内に入って、発熱や下痢、咳などの症状がでることをいいます。大切なのは、いかに病原体を体内に入れないようにするかです」と語る小松﨑さん。人は、体の中に入った異物を排除するはたらきがあるので、熱が出たり体外に排出するために嘔吐や下痢などの症状が表れるのです。

感染症の対策はとにかく病原体を体に入れないこと

病原体の侵入経路は主に鼻と口から。「考え事の際など、無意識に鼻や口に手を当てる人は多いですよね。そのとき、手についていた病原体が目(目と鼻はつながっているので)や鼻や口の粘膜を通じて体内に侵入してしまうのです」。では、手についている病原体はどこから来ているかといえば、“多くの人が触れる場所”です。電車やバスのつり革、ドアノブ、エレベーターのボタンや電気のスイッチに付着したインフルエンザウイルスは半日近くも生きているそうです。不特定多数の人が触る場所は、それだけ生きた病原体が付着している確率も高くなるのですが、まったくそれらに触れないというのは難しいですね。外出時には、不用意に自分の目や鼻や口に触らないことを意識することで、体内にウイルスや菌の侵入を防ぐことができます。とはいっても、無意識の行動を控えるというのも難しいもの。だから外出時は手を洗うまで、「せめて肩から上に手をあげない」ことを意識してみましょう。「病原体は、目に見えません。例えば、風邪などを予防するためのマスクも、キレイなものと思い込んでいませんか。咳やくしゃみなどの飛沫を受け止めるマスクの表面は?そう考えてみると病原体はさまざまな場所に。『ここは病原体がいるのでは』と想像力を膨らませるのが大切です」。小松﨑さんによれば、感染症対策として最も手軽で効果があるのは手洗いとのこと。「『外から帰ったら手洗い』とよく言いますが、家の中に病原体を持ち込まない習慣作りは感染症対策のポイントです。たかが手洗い、されど手洗い。食事前や外出後の手洗いを徹底すれば、感染症はかなりの確率で防ぐことができます」。

もしも感染してしまったら…看病とケアのポイント

では、もしも自分や家族が感染症になってしまったら。どのようなことに気をつければ良いのでしょう。

1. 感染している人を隔離して、看護する人を決める

まず感染している人を個室に移して隔離しましょう。家族の誰かが体調を崩すと、周囲はついつい心配して家族全員で看病したくなるもの。でも、感染症のときは要注意!家族内感染を抑えるためにも、病人を看護する人はできるだけ一人に絞りましょう。ノロウイルスにかかった子どもの部屋を両親や祖父母が入れ替わり立ち代わり看病に訪れて、全員がノロウイルスにかかる…なんてことも考えられます。心配する気持ちはグッと抑えて、病人は別室に隔離し、接触する人は最小限にとどめるようにしましょう。

2. 手洗いをしっかり。タオルは感染者専用に

前述のように病原体は手に付着し、目や鼻や口の粘膜から侵入します。知らない間に手に付いた病原体を洗い落とすためにも手洗いはこまめにしましょう。感染した人が使用するタオルは病原体で汚染されていますので、家族と分けて専用にしましょう。

3. お風呂は一番最後に

感染している人の入浴は、必ず一番最後にしましょう。感染している人がお風呂に入ると、お湯に病原体が混じってしまうので、後から入った人にうつってしまう危険性があります。病原体を熱消毒するには、64℃以上のお湯が必要です。入浴程度(40℃前後)のお湯では熱消毒できないことも知っておきましょう。

4. 消毒を意識する

感染力が強い病原体は、消毒が大切。特に冬に流行するノロウイルスは感染力が非常に強く、感染者の便や吐しゃ物には大量のウイルスが含まれており、1g中に菌が100万~1億個以上存在しているとも言われ、わずかなウイルス量(10~100個程度)で感染します。目に見える範囲の吐しゃ物を片付けたとしても、時間が経って乾燥すると、吐しゃ物で汚染された床やカーペットなどに残ったウイルスが空気中に舞い、それを吸い込んで空気感染することがあります。

また、ノロウイルスはアルコール消毒が効かないのも特徴。便や吐しゃ物の処理をするときは、使い捨ての手袋とマスクを着用し、キッチンペーパーや新聞紙などで取り除き、ビニール袋に入れます。残った便や吐しゃ物の上に、キッチンペーパーをかぶせ、その上から50倍から100倍に薄めた市販の塩素系漂白剤を十分湿るように注ぎ、汚染場所を拡げないように拭き取ります。捨てるときは、便や吐しゃ物が乾燥しないようビニール袋の口をしっかり縛って密閉することも忘れずに! 吐しゃ物を片付けた後は、換気を十分に行いましょう。ウイルスは熱に弱いので、布団やカーペットなどすぐに洗濯できない場合はスチームアイロンを使うと効果的です。

感染症は、かかった本人がつらいだけでなく、周りも心配してしまいますよね。感染症にならない基本は、体調管理。栄養・睡眠・運動を日ごろから心がけ、免疫力を高めるのも大切です。自分のためにも家族のためにも、感染症にかからないように日頃から体調管理と手洗いを意識するようにしましょう。

[お話しを伺った方]

小松﨑 直美(こまつざき・なおみ)
順天堂医院 医療安全推進部 感染対策室 主任。感染症のスペシャリストである感染管理認定看護師の資格を持つ。

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